我れ若し女帝の密使なりせば

lecorsaire.exblog.jp ブログトップ

ゴジラのテーマ 

d0242071_206136.jpg


池袋、東京芸術劇場大ホールで、新交響楽団第196回演奏会を聴いてきました(2007年2月4日(日))。


前回11月12日は、一世一代の大盤振る舞い、コンサート様式の『トリスタンとイゾルデ』をやったので、ワーグナーを浴びるが如く堪能したのだが”新響”そのもののエレメントは聴きそびれた気がした。
今回は、その辺をたのしみに聴くことにした。

曲目 ボロディン/歌劇「イーゴリ公」序曲
   コダーイ/組曲「ハーリ・ヤーノシュ」
   伊福部昭/「シンフォニア・タプカーラ」
<伊福部昭 没後1年追悼演奏>
指揮 井崎正浩

一曲目の、ロシアの作曲家ボロディン(写真1)の「イーゴリ公」序曲。
いやはや、うなりとうねりが地軸をふるわす、ロシア建国叙事詩の英雄譚を、ヴィジュアル感たっぷりの堂々たる語り口を、熱演してくれました!
足元から、わらわらと熱気が上がってくる。やっぱり、これは聴きにきてよかったと感銘にうたれた。

ハンガリーの作曲家コダーイ・ゾルダン(写真2)の組曲「ハーリ・ヤーノシュ」は、今回いちばん楽しみにしていた。ライブで聴いた誰もが「すごくいい!」と絶賛するこの曲、ナポレオン軍をたったひとりで負かした大ボラをふく(ぷおー)ハーリ・ヤーノシュが主人公の、英雄譚のオチョクリばなし。指揮台の横にはハンガリーの民族楽器のツィンバロンが賭博台のように置かれる。「イーゴリ公」序曲をこえるヴィジュアル感あふれるオーケストラ術はさえわたり、ツィンバロンの土俗臭につつまれて、駄法螺ばなしも説得力充分。

じつは十?年まえにFMで聴いたときは、まるでピンとこなかった「ハーリ・ヤーノシュ」。
映画をテレヴィ画面でみるより劇場でみた方がずっといいのと同じ感覚で、ハンガリーの映画を、無字幕でことばもわからずに見てそのリズムに感激したような歯ごたえだった。
マエストロ井崎の、右胸からのぞく真っ赤なチーフが確信犯的にワザとらしく、・・・・指揮者の、後ろ向きとそのポーズが、すごくウサンくさくみえてしまう公演だった。
怒涛の拍手がわきおこり、そのいきおいにのまれて自分も手をたたいているのが、まるで詐欺師の鮮やかさに面食らった心持・・・・・。


今回の公演は、伊福部昭(写真3)の曲をラストにして、作曲家の一周忌を表する志向であるが、アジアの同胞たちへの敬意といった側面も見えた。ヨーロッパとアジアの中間に立つロシア人と、姓+名のフルネーム表示のハンガリー人。そして伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」は、アイヌの”足を踏みしめる動作の立ち踊り”タプカーラに敬意をあらわしている。
この曲は、新響が何度もとりくんでいる入魂の一曲だけに、その熱演は、今回いちばんの聴きものを結晶させてくれた。
三楽章(終楽章)のクライマックス、最高音域でピッコロ二台が超絶技巧を爆走させる、アイヌ祭りが憑かれたように踊りに没頭する曲想が大ホールにひろがると、客席じゅうの新響ファン全員の「これだ!これが新響の醍醐味だ!」という快心がたちこめてきて、もう体中がやみくもな上昇血流に熱してくる。むかしFMで、新響がベルリン芸術週間で石井真木の大曲を公演したときの放送をきいて手に汗にぎった感触が、あれはやっぱり錯覚なんかじゃなかったんだと、今回のライブ体験で実感できた。

大ホール全体をうめつくす、カタストロフぎりぎりのカタルシスの拍手万雷。



そして、
何度目かのカーテンコールのあと、
楽団メンバー数人が加わり、
マエストロ井崎が、紺色のチーフを胸に、アンコール用の総譜片手に登場。

始まった。日記のタイトルにあげた、
名曲中の名曲・・・・


日本海とならんで、東京湾を映画写りの良さへと磨きあげた音楽(正式な名前は「SF交響ファンタジー」という名前)。ラヴェルのピアノ協奏曲がきこえてくる有名なフレーズはご愛嬌だが、アンコールで聴くと、めっぽういい。

「:*/$@'|baI\&o!!!!」大ホールに、轟く咆哮!
ステージ右から、総重量六十キロといわれる、小山のような着ぐるみが、しっぽをひいて登場した。おお、背びれも光ってる!口からの光線放射が、虹の半円をえがいてステージを、
新響全奏のりんかくをぶあつくつつみこんだ。
[PR]
# by lecorsaire | 2007-02-05 18:52 | 音楽

銀座で『雨月物語』

d0242071_1958894.jpg



江戸の頽栄期に、能楽・金春家の大御殿がひろがっていたあたりの地下空洞を瀟洒に飾ったbar「貴族」にて、上田秋成の、古色な字づらをなぞって現代ことばの艶欲地獄を導いた、「雨月物語・蛇性の婬」の朗読パフォーマンスをみてきた。


第74回山口椿の会 チェロ/山口椿、朗読・ダンス/雪香
以下<>は、ご案内のハガキ文を拝借。

<柔弱で世間知らずな青年豊雄は、雨宿りの途中であったあでやかな未亡人真名児に魅惑され、誘われるままに契りを結ぶ。>


頭も尻尾もない、チェロの音色が絵巻物語のような美殿にまといつく雲流をえがき、伴奏と独奏とのヤヌス双顔神の輪郭をうねらせて、朗読のことばのうねりと共鳴する。
正しい形より、絵画性、儀式性、予言性をたたえた形の文字列でものがたりを綴る、筆先をかかげた先端からしたたる墨痕が、射精のミルククラウンをえがく。


<真名児は豊雄に数々の宝物を贈り、酒色でたぶらかすが、その財宝はことごとく盗品だった。>


”金銀(きがねしろがね)を飾りたる太刀の、あやしきまで鍛ふたる古代の物”熊野新宮の宝庫から紛失した宝剣を豊雄におくる真名児は、能面のかおだちと、「怪談牡丹灯篭」のモチーフにきらめいたドレスの総身とを、幽玄な舞い足に流立させ、朗読の台本を置き去ると、
支えピンの上で振幅麗々たるチェロ、
濃度を増したミルククラウンの周囲を、
能も歌舞伎もしのぎたい無垢な慢心をたたえて転舞する。


<ことが露見し、捕縛された豊雄は、真名児の館へ役人どもをつれていくと、彼らの目の前で、突如美しい真名児は、大音響とともに蛇体に変身し・・・・>


ミルククラウンは凍結し、はじける八球のしずくは大蛇・おろち・雄呂血の眼球を血ばしらせた。
大蛇のきばも般若の角も舞踏に染みた指先は朗読の台本をつかみ、唇いろをにじませて、
雪を積たるよりも白く輝々しく、
眼は鏡の如く、
紅の舌を吐いて、
終幕まで一呑みに飲む勢いで語りくだす。

豊雄を背に、かなたへ消え去った魔獣ののこした、荒れ屋敷を庭じめんごと地平線へと溶解・流鬱させるチェロの、淫々滅々のこだまが、とおのくにつれて、余韻はますます深みをおびる・・・・




・・・・ん?
(舌のうえに、異物を感じます。指をつっこんでいる最中)

(ちょっとびっくりして、つばを呑む音)

指先に、蛇のうろこが二枚、はりついている。
[PR]
# by lecorsaire | 2007-01-21 18:40 | 公演

白い黒鳥の緞帳

d0242071_20325614.jpg


二年ばかり、バンド"phenomena"のライブを追いかけている。
昨夜はphenomenaの、今年さいごのライブ。
ベース以外の、メンバー四人とも女性。「おんなの男ごころ」を、この日はひときわ奔流させ・・両性具有の皇帝につかえる拍車靴の近衛兵すがたを、一群のライトに反響させる。
ダヌンツィオか、コルヴォー男爵の小説の、女装も軍装もあざやかな少年さながらのヴォーカルが、鎖を時計振り子のかたちにゆらしながら四分の三拍子のワルツを導き、ステージを、フリークスの見世物館の格子でおおいつくす。
ヴォーカルの手のなかの鎖がえがく、震度計の針のゆれにいらだつワルツが、フリークスの鬱感を歌詞につづったメリーゴーランドを旋廻させ、その輪がどんどん、膨らんでいく。
「おわっ!」
震度計の針が、振り切った!
鎖の先端につりさがっていた、ガラスランプが割れ、ステージと客席に破片がとびちった。一気にライブハウスの空気が加熱する。
見世物の格子を破壊したフリークスワルツは沸点の靴音さばきをきざみ、ヴォーカル転倒しながら歌声を、帝寵にくるった畸形歌手の螺旋いろに轟かせた。
余熱もさめぬままに、ラストの一曲を、雪の想い出に消えゆく老師父への哀切を超えて彼方へ行く少年へささげて燃焼しおえると、最高潮を発したテンションの客全員からの、万雷の拍手をあびつくしたのだった。・・・・・
[PR]
# by lecorsaire | 2006-12-31 14:19 | 音楽

裁かるゝジャンヌ


d0242071_23403074.jpg



デンマーク・サイレント映画黄金期の名匠、カール・ドライエルが、ほかの作品より何オクターブも高い情熱の蕩尽によって産み落とした映画「裁かるゝジャンヌ」を、教会で見てきた。

一片たりとも隙のない透徹な構成力はところどころで、そのきびしさが度を超えて痙攣寸前まで硬直している。・・・・映像リズム感の、野獣的なうつくしさに寸毫もみあわぬ、登場人物すべてのおぞましさ。集団ヒステリーに煽動された、宗教裁判官と兵隊と群集がとりかこむジャンヌは、本物のキ・チ・ガ・イ!
・・・・撮影終了後、役者もスタッフも、みんな実生活復帰に、そうとう苦労したんだろうなぁ。

サイレント版「地獄の黙示録」を、スクリーンの両翼から、スタインウェイのピアノと、金属製加虐器具庫さながらのパーカッションで、伴奏どころか、映像リズムを煽りたてる。名手ルドルフ・マテのカメラワークが、スクリーンからとびはねんばかりに躍動している。
クライマックスの、火刑台のジャンヌに嘆き苦しむ群集場面は両翼からの音楽と、濃絶に対流しあった。
ラスト、「聖女は火あぶりにされた!」群衆がいちどにキレて暴発し、あきらかに”キレるのを待っていた”兵隊たちが群衆をかたっぱしから殺してまわるーートゲ突きの鉄球、投げ槍、双発大砲!(狂っている! このキ印が、しかし芸術なのだ)の乱舞スクリーンの横手から、チェーンソーの火花が、教会礼拝堂の天井画まで噴きあがった。


d0242071_23405696.jpg



写真は、ドイツの画家シビル・リュペールがマルドロールの歌を題材に書いた作品。今回の上映会のあいだ、彼女の絵がいくつもいくつも脳裏をかけめぐった。


みんなすごい満足していた。
「ドライエルが、あの世でよろこんでいる」
「サイレント映画の、この上ない贅沢をあじわった」
[PR]
# by lecorsaire | 2006-12-26 14:50 | 映画

12/19 **IMMIGRANT HAUS#4**

先日の、TOKYO DARK CASTLEでねばりつくような艶麗なライブを披露したバンド、LLOYが主催する、クリスマスイベント”IMMIGRANT HAUS#4”に出かけた。

渋谷の東急ハンズそばに掘った、地下への階段をおりると会場のチェルシー・ホテルが一面、ロウソク明かりや石膏像、天井から下がるシャンデリアや白レースで飾りつけられ、外からの空気は完全に遮断された、人工楽園がひろがっていた。
耳をすませばフランス語があちこちからきこえてくる。網タイツに黒のコルセットで飾った白面ブロンド長身のカバーガールさんたちがあるきまわり、バンドのライブが始まるたびに、ステージ左右から張った薄奢な紫のカーテンを、彼女たちが開いていく。

パリから来たdead sexy(ヴォーカルの右腹には”捲土重来”のタトゥーが)、TOKYO DARK CASTLEのリーダーJunet率いるauto-mod(最近はセカンドヴォーカルにカウンターテナーが参加してる!)といったバンドが、強音なくせにしなやかなライブを披露すると、セッティングにひときわ時間をかけて、ステージまで白レースまみれにした、トリをかざるLLOYが、カタラーニの「ワリーのアリア」をBGMに登場した。

まちこがれた観客の、ものすごい数!


一曲目の、放縦な愛にふるえる中東の半神レザミーを歌詞に、スロータッチにうたう女ヴォーカルは、真っ白な両腕と両脚をむきだした裸足すがたをからだの線ごとライトにうかべ、けむり立つ大麻迷宮のようなメロディーをまよいめぐっては、ウィスパーのきいた歌声を、宙かなたまではしらせる。

ライブが進むにつれ、体は素直に曲にのってくる。
還元濃縮されて旋回加速するメロディーが、何十色もギラギラ輝いて沸騰する。ヴォーカルは、恥らうように、あざけるように、英語の歌詞をちりばめて、ものすごいウィスパーをきかせて挑発する。
一曲おわるたびに、フランス語の嬌声が炸裂する。





繊細微妙のわざある手もて、
瑪瑙の、とある文理のなかに、
たずねもとめよ
アポロの神のおん横顔を。

画家は棄て去れ水彩の絵を、
七宝工の陶窒に入れ、
移ろひ易き
色彩をして、固定せしめよ。

描けよ、青き人魚の群の
よろずの態にその尾鰭をば
くねらせしむるを、
また紋章の怪異のむれを、

円三瓣の光背めぐらす
聖母マリヤと御子キリストを、
王権の章、
十字架据ゑし黄金の球を。


(テオフィル・ゴーチエ)

[PR]
# by lecorsaire | 2006-12-21 17:04 | 音楽

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


by lecorsaire
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite