我れ若し女帝の密使なりせば

lecorsaire.exblog.jp ブログトップ

9/29(土) 『MasqueraDead』、『MODERN NOH PLAYS-卒塔婆小町-』ソワレ  1



ڰ☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰڿڰۣ


台風第24号「チャーミ」上陸を前日にひかえた9月29日土曜日の、既にやや不穏な雨のなか、気圧の低さにも少々だるくなりながら、<舞台芸術創造機関SAI アバンギャルドシアター>による、三島由紀夫の舞台2本が観られるという期待はやはり大きかった。最初に観る『MasqueraDead』は、三島の処女長篇で『金閣寺』に次ぐ傑作『仮面の告白』の、いわば”SAI版”といえる舞台化になる。どんな舞台になるのか。


ڰ☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰڿڰۣ

Ⅰ. 14:30 『MasqueraDead』
江古田駅を降りて向かった、アトリエ・サードプレイズ地下一階の『MasqueraDead』会場に入ると、最前列が既にすべて荷物で埋まっている。
「?」
入口でならんだ順に降りてきたどういう訳だと思っていたら、ほどなく『MODERN NOH PLAYS-卒塔婆小町-』マチネを観終わった地下二階のお客さんが上ってきて、最前列に次々座っていった。
今回の公演、最前列で観られなかったことは、やはり、痛手だった。




私の名前はキミ。
見た目は女、心は男、好きになるのはもちろん男・・・。
そんな私が好きになってしまったのは中学時代に憧れていた、初恋相手、
先輩(女)だった!!大変!!!
とある事件をきっかけに、回りだす私たちの運命の歯車・・・。
先輩はある日、真実を告白する。
「私は、男なんです。」
待って待って!!先輩は私が男だって気が付いていない!!

『仮面の告白』をモチーフにした新作朗読劇。
告白と告白がぶつかりあう想定外過ぎる恋の行方。
その結末は如何に??!

以上、http://stageguide.kuragaki-sai.com/guide/av02mishima/ 掲載の『MasqueraDead』-物語- より、引き写し。




結論から言えば、『MasqueraDead』は原作の『仮面の告白』のエレメント、息吹きも、とっくと味わえる、”SAI”がてがけた、いつもながらの鮮やかな演出と舞台だった。60分強の上映時間は凝縮され彫琢された文体をおもわせもしたし、プロジェクターが役者もろとも壁へとスマホの画面がうつしだすのも、目線が高揚するだけではなく、説得力も感じた。この舞台では終始、だれか絶えずスマートフォンを操作している。自然を精巧に模造し哲学を築きあげる日本庭園のような静かな調和をおそらくは理想にしてつくったはずの国産スマートフォンが『MasqueraDead』のなかに持ち込まれると、残酷も破壊願望も綯いまぜにして、工藝品のようなスマートさでできたマスク(仮面)の箱のふたで封じられた、攻撃し、制圧し、奪って、破壊する、ほんとうの美が、封印を解かれるのを待ちつづけているのだ。しかし、スマートフォンの画面には、うっすらと、傷がうまれかかっているのをオープニングから察知できた。


キミという名前は、三島由紀夫の本名の、平岡公威(ひらおかきみたけ)のキミだろうか、それとも・・・・・・

常盤美妃(とっきー)さんのキミが、透き通った綺麗な声で、ちっちゃくてかわいい。『贋作マッチ売りの少女』で幻想都市ロンドンのヴァン・ゴッホをピーターパンのように駆けずり回るのがかさなりあう姿で、Tokyoをパンツスーツで闊歩すれば、かっこかわいさ!で就活女子と勘違いされる。ちなみにキミ役の常盤美妃が文京区本駒込の画廊「ときの忘れもの」で忘れ物をすると「とっきーの忘れもの」になるわけだが、それは今回の公演とは関係ないw



離婚も経験しているキミは、つよくなりたい「男の子」なので、ジムに通っている。そのシーンに登場するインストラクターが、筋肉自慢のSAI製作局長渋谷翼さんだったのは、やはりといえばいえるのか。これ渋谷さん初舞台?今後もSAIの舞台に登場する??


キミのかわいさに、キミがオーミ先輩に、学生時代からずっと恋し続けてるのも知らずに、・・・・・・・・ある時オーミが、男の心で、ひとめぼれしてしまう。
三島由紀夫の『仮面の告白』の前半に、荘厳な文辞のつらなりに、澱んだ、あやかしの影をおとす「近江」が、平成に転生したのか。ふてぶてしさは変わらない。オーミは人気のユーチューバ―で、詩人で、実力のあるライター。キミはオーミが、セクハラ上司に公園で襲われそうになったところをボコ殴りして助けたのを縁に、キミの別れた夫が残した家で、ふたりは同棲をしている。



舞台は、ときおりダンスでも語っていたが、主軸になってのは、朗読劇だった。
朗読をぶつけあってうまれるセリフのやりとりは、三島独特の荘重体・デカダン文体の模倣ではない。しかし、朗読の一人称、「あたし」と「僕」と「わたし」と「おれ」が、キミとオーミのなかの女と男を、心が勝手にボールのようにうごきまわるのをもてあそび、
能楽の衣裳の残像が、幾重にも残って見えるさまをえがいているようにみえた。オーミもキミも、あるいは能面と能衣装のおもさの奥で、きりきりと炎を燃やしているのではないかと、最前列のひとつ後ろの席から、もどかしさに食い入って居た。



オーミがキミに、自分は男であるという秘密を打ち明ける場面が一番心に残った。ふたりとも客に背を向け、顔もみえないので、まるで能楽の広大無辺が奔流し、発狂して白目が金色にかわっていく顔と、銀いろの真砂と青いろのそらが脳裏にひろがってみえた。



能楽、能楽とうるさいのは許してほしい。『MasqueraDead』の次に観た『MODERN NOH PLAYS-卒塔婆小町-』ソワレの印象と綯い交ぜにしないと、この仮面の告白の化身を語りきる事ができないのだから。
キミが『仮面の告白』を読んでいるシーンは、マノエル・ド・オリヴェイラの映画『アブラハム渓谷』で映画の原作の『ボヴァリー夫人』(作者はフランス語の文体魔人フローベール)を、映画の中でヒロインが読んでいるシーンを連想して観てたりしたけど、キミが舞台上で読んでいたのは、『仮面の告白』のこのシーンだろうか・・・・・・主人公の「私」が、送り迎えの駅のホームにあらわれない恋人の園子が、いままさに走り出した電車の柵のむこうから別れを惜しむ声をあげる姿に胸の奥がしめつけられる、しかし、この胸をしめつける、この「感情」は、一体なんだ??この感情を抱いた報いは、鋭い疲労で、懲罰への深まりだった。「この一種透明な苦しみの性質は私が自分自身に説明してきかそうにも、類例のない難解なものだった(三島由紀夫『仮面の告白』)」もうおしまいだ、もうおしまいだ、と「私」が呟くまでの、この数行に籠められた、極寒の高揚が、『MasqueraDead』へと受け継がれ、キミがオーミへと投げかける、情のちからが、それそのものが生き物のちからと重量とを得、情の勢いに身を委ねても、それが、「愛情」にも、まして「幸福」にも繋がらす、苛立たしさだけがこみあがり、幸福をはねのけ、「快楽」を追求する、悲劇的なものに重厚な手触りを求めていく姿が、執拗な反復をえんえんと繰返し、能楽をみているような、反復の積み重ねにやがてオーミがぶちぎれる。調和であり文体でもある、スマートフォンの画面が、ぱっくりと傷をひろげて絶叫する。オーミは「近江」だったころの暴君ぶりを、片時もわすれていなかった。

こもだまりさんの、オーミを演じきった、ききわけの良さに着地しない、「死刑囚にして死刑執行人」、殉教する聖セバスチャンの舞踏が、つめたい円環をえがいて、暗転、幕。





「オーミ」と「キミ」は今回、適役を得て舞台上に現れた。
ただ個人的には、「沈鬱な調和をえがいた静かなたたずまい工藝品のようなスマートさでできた仮面の箱のふたで封じられた、攻撃し、制圧し、奪って、破壊する、ほんとうの美」の、封印を解かれた暴れ様というものにはまだ、物足りなかった。再度の上演に出遭う事がある時には、ここにも大いに期待したい。



『MODERN NOH PLAYS-卒塔婆小町-』ソワレまでのしばらくの間、頭の風通しをよくしたいので、空気を吸いに、地上へあがって、江古田駅前を散歩した。




*つづく*→ https://lecorsaire.exblog.jp/27156287/


☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸
☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸
☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—
☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸
☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸
☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸ڿڰۣ—☸ڿڰۣ—*.☸



[PR]
by lecorsaire | 2018-10-04 18:05 | 公演

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


by lecorsaire
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite