我れ若し女帝の密使なりせば

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「贋作マッチ売りの少女」神奈川公演(2月4日マチネ・ソワレ) 2


「贋作マッチ売りの少女」神奈川公演(2月4日マチネ・ソワレ) 1
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そして・・・・・・遂にこれを書く時が来た。
神奈川公演で度胆をぬまれたのが、”霊薬の製法を知る男”修道士デストレの登場シーン。「神はどうせ助けてはくれぬ / 私が、この世で最も愛する者を神は奪った!」ヴェクサシオンの曲、「ドラクル」の朗読詩を絶叫して登場するデストレ。そうか、デストレの・・・・人造人間キカイダーか「AKIRA」の鉄雄みたいな両腕は、デストレ役の恩田純也さんが「贋作マッチ」漆黒公演で演じたポール・ゴーギャンのルックスに酷似しているではないか。漆黒公演でポールが、ヴァンの描いた自画像を破壊する。「お前の自画像、耳の形がおかしいんだよ!」とどろくヴァンの狂声。人界での確執を超越した異次元的場面のつづきを見い出さずにはいられなかった。そしてデストレのなかに、ジャンヌ・ダルクをうしなった絶望の末に小児殺しと錬金術に耽溺するジル・ド・レの暗像を見ずにいられなかった。「神よおまえは、私の病める魂を救ってくれなかった」漆黒公演の地下室から這い上がって、・・・・・・アルルをうしなったヴァンがロンドンを狂奔するように、ジャンヌ・ダルク・・・・・・・ヴァンをうしなって、霊界の船旅に帆を駆るポール・ゴーギャンは小児切り裂き魔の青い髭の光をしたたらせ、孤島の修道院の霊薬に開眼した。デストレは、神奈川公演に賢者の石の隕石になって落下してきた。

音響が、まるで見えない俳優になって火であぶった匕首のように冴えわたる。
デストレ出現に驚愕する幻想都市の暗黒結社たち、
闇の詩人ヴィクトル・ユゴーはデストレからわきあがる光の沸点に目がくらみ、
シャーロックの、麻薬が総身にゆきわたってシャンとはりつめた筋肉で繰りだすボクシングのパンチを撃退し(もしシャーロック得意のヴァイオリンで狂気をあびせてもたぶん撃退されそう)
シャーロックのライバルのモリアーティ教授が裂帛の気合いとともにくらわす跳び蹴り・・・・・これはシャーロック得意の日本武術の、バリツ? 
これも撃退!!


ところが最後にひかえる錬金術師エリファスは、デストレを自分とおなじ境遇に見ていたようだ。
エリファスが、秘蹟の杖をふりあげる。カトリック司祭から出発しアナーキズムの情熱を爆発させたのちに神秘主義の扉をひらくエリファスが、錬金術の説く「絶対的な中心の探求」の旅の途中で出会ったデストレに、「恐れるな!」と戒めるかのように。杖の軌跡が、音響と呼応する。
デストレ(漆黒公演のゴーギャン)は出会いを果たす、神奈川公演のゴーギャンに。霊薬をゴーギャンに手渡し、ジャンヌ(漆黒のヴァン)がいる世界へ、喉を切り裂かれて旅立ってゆく。
このシーンで、大島さんが歌うヴェクサシオンの「ドラクル」からは炎天下にそそがれる冷たい潤いをうけとった。


栃木公演でのデストレとエリファスのシーンが、いまいち腹まで降りてこなかったのが心に残っていたので、神奈川公演でその言わば「借り」を自分なりに返せたのではないか。少々胸焼けしたけれど。




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ヴァンの弟ジオに、はじめて遭遇した栃木公演では「老獪で鉄面皮」、劇作家の情熱の氷漬けをかぎとり、こういう役は俳優もさぞかし大変だろうなあと溜息がもつれていると、
東京公演でふたたび遭遇(あの出だし、すごいよかった)した時には「白夜」と「漆黒」それぞれが、”ジオ様”を降臨させ、死の天使の誘惑にSNS上が狂喜乱舞・・・・

ここで終わらなかった。終わってほしくなかった。







やはり「贋作マッチ」は期待を裏切らなかった。
ファイナルの神奈川公演に至って、ヴァンが収容されたサナトリウムの俳優や看守たちを震撼されるマックスハイテンションを謳いあげる、<最終形態ジオ>が披露されたのだ!!!!



アルトーをヴァン・ゴッホにしたてあげたジオが、アルトーをコントロールできない苛立ちを爆発させる姿にこれまで栃木、東京でみてきたジオたちの哀しみや苦しみが痛烈におおいかぶさる。


ルイ・フェルディナン・セリーヌがハンガリーの医師ゼンメルヴァイスに下された無理解を慨嘆する霊筆に、アルトーの「ヴァン・ゴッホ」との交感を読み取る人はいくらでもいるだろう。
"人は炎の暖かさを愛することはできる、だが火傷したいとは誰も思わない。ゼンメルヴァイス、これは炎だった。"
(菅谷暁訳『ゼンメルヴァイスの生涯と業績』)
早くこの本、日本中に溢れかえれ。



東京公演が終わったあとも、ジオの俳優たちが、ある時はハイテンション(漆黒)、ある時は「きょうはもう駄目」(白夜)。
ああこの役・・・・・・俳優をとことん締上げる。
神奈川公演が終わったあとで、ジオと話す男性の声が茫然自失していた。

栃木、東京、そして神奈川へと、レー医師と、ジオとのやりとりがその内面を変転させていくさまを見てきた。幻想的正確性をきざむロンドンの尖塔時計の外見に内含された堅牢な歯車の群を、栃木から出発し東京へ移行するにあたって緻密なパーツを大量に増加させて緻密な表情をめいっぱいさらした。あるときは凶悪なきしみ音をさらし、あるときは脆すぎるほどのしなやかさですすり泣く。それは神奈川版にいたり、はずみのつき過ぎたテンションで緻密なパーツが持ちこたえられなくなった。 栃木版からは大舞台の解放感を、東京版では緻密な小説の躍動を目撃し、神奈川版では、ゴッホの絵をさかさまにかかげて、その画面いっぱいに、短くて強烈な詩の走り書きをほどこす、レー医師とジオの変転を見届けることができた。





「贋作マッチ売りの少女」神奈川公演(2月4日マチネ・ソワレ) 3につづく
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by lecorsaire | 2018-02-09 22:49

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


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