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我れ若し女帝の密使なりせば

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『緋哭』ーひのさけび

『緋哭』ーひのさけび
舞踏:吉本大輔
墨刻:原賢翏
音楽:関口大
12月9(土)、10日(日) Open 19:00 Start 19:30


東生田会館(イベントホールとかではない、ごく普通の多目的集会場)での吉本大輔舞踏公演 『百合懐胎す』(2011年12月1日〜7日)から6年が経ち、
12月10日午后6時前、神奈川の向ヶ丘遊園駅南口に、6年ぶりに降り立った。



東生田会館の内部は、壁も床も黒布でおおいつくされていた。
天井をおおう紗幕は暖房の熱風をあびてゆらめく、喪服のヴェールが吐息を吸うように。
黒い床のうえに、書道でつかう長い文鎮を、15個置いた、書道半紙の大判がでかでかと敷きつめられ、緋色のロープが、天蓋ベッドの四本の柱みたいに天井から吊り下がっている。


大輔さんの舞踏だけではなく、
未知の領域が二つ、悪夢の海から顔を出して睨みつけてきた。

原賢翏の墨刻が、黒い蛇のうねりになり、蛇の舌の緋色となり、ステージの白い紙に刻まれていく。
墨の文字は、ステージまで這って行ってなめたくなるほど、凄まじい。
ドロドロに揺れた空気のなかで阿片窟が浮き沈みし、
椅子からころげおちそうになる。


緋色の寝台から・・・・・・
関口大の10ホールズハープが響き渡る。
気怠いねいろを虹色に染めて、輝きの尾をたなびかせて。
天蓋つきの寝台が、あまりにも美しい。

美しさが、東生田会館の座敷霊が、吉本大輔の舞踏のそこなしの白さで寝台にまといつき
天蓋からは、吉本大輔が持ち帰った冬空のまきちらした風のおちばが、関口大の頭上へふりそそぐ。
禁色の雨が、・・・・・・・・・・・・・・・・ダナエーの心を奪う。


『緋哭』ーひのさけび_d0242071_19094000.jpg
ダナエー・・・・・ギリシア神話に登場するアルゴス王の娘。
アルゴスの王はダナエーをブロンズの部屋に閉じ込め、男が近づかないようにしたのだが、有る時ダナエーの身体に、まばゆい黄金の雨がふりそそぐ。
黄金の雨に変身したゼウスとの交合によって、英雄ペルセウスがうまれた。

黄金の滴が、黒く赤く、ステージにしたたる。兵士達を美しい屍にする血、司祭たちがおこなう儀式の最高潮を演出する血が。


吉本大輔が、みずからの肉体の美しさにいらだったのか血のにおいを嗅ぎ取ったのか、
ペルセウス彫刻のような美を破壊する狂態を炸裂させるーーーーーーー凧糸にした、緋色の布紐をひっつかみ、永遠のような長さを躍動させ、
ステージ四方の客席へ突進し、からみつき、客の足やら、上半身やら、私の首に、ひもが巻きつけられ、
客の脳内にもぐりこんで、こねくりまわしてくる舞踏が、ひとしきり中身をくいあらすと、外へ這い出て、
ペルセウスに倒されたメドゥーサの打ち首になると、
ステージを這い、墨文字にほおずりし、中心の寝台で暴虐鎮座すると
ステージ四方から伸びる緋色の布紐たちを、遊惰でありながら緊迫させる。
ダナエーの、臍の緒のむれを。
メドゥーサの頭髪の蛇たちを。




音楽が、筆のいきおいが舞い止まぬ。







by lecorsaire | 2017-12-12 19:10 | 公演

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


by lecorsaire
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