我れ若し女帝の密使なりせば

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サイレント映画『ばらの騎士』

1926年の作品で、リヒャルト・シュトラウスのオペラ(1911年初演)の、映画バージョン。以前から、スチール (←画像あり)でみてひじょうに綺麗なのを知っていたので、これは絶対観なければと興味津々で、フィルムセンターに足を運んだが観終わって、茫然となった。
『ばらの騎士』を愛するオペラファンにとっては、無理に観る必要はまったくない映画だった。

この映画を観た客が、オペラの『ばらの騎士』を聴きに来ることへの、期待がこめられていたらしく、ウィーンの庭園や、ハプスブルグ家のベルヴェデーレ宮殿などで歴史的ムードたっぷりに、絢爛豪華に撮影されたのは結構(衣裳なんか、昨今のオペラ『ばらの騎士』での衣装など足元にも及ばないような精緻かつ重厚なデザイン。ほんとうなら、カラーで観たかった)だが、映画としては?というと、これが、印象に残るものが、全然なかった。
監督は『カリガリ博士』を撮った名匠ロベルト・ヴィーネなのだが、特筆点はまったくなかった。
ストーリーは、オペラとは全然違っていた。フーゴー・フォン・ホフマンスタール(オペラの原作者。ウィーン世紀末耽美を代表する詩人で小説家で劇作家。映画版『ばらの騎士』も、かれがシナリオを書いているが、乗り気ではなく、中途半端なシナリオで書きやめた)は、映画版『ばらの騎士』に、かなりの不満をもっていたらしい。

映画のなかに、原作には登場しない「元帥」が登場。(字幕では「公爵」と表記。)これが原作とは比較にならない壮年の、威厳は足りないがまあまあ美丈夫で、大部隊を雄猛に指揮して勝利にみちびく。彼は戦場の陣幕で、妻の元帥夫人(字幕では「公爵夫人」)の不倫を知り、凱旋の余韻もふりはらい早馬で屋敷にかけつける。仮装舞踏会でひしめく屋敷の庭園で、姦夫オクタヴィアンをとらえ、決闘におよぶ・・・・・・・もう原作オペラの、おっとりしたムードぶちこわし。これで面白ければそれなりに楽しめるんだが、面白くなかった。

オックス男爵も、遊蕩貴族だがどこか憎めない「グラマー爺」だった原作のすがたが、霞んで見える。
ゾフィーは、可愛くて良かった。婚礼ドレスを纏うまえに、貴婦人の歩き方をダンス教師からレクチャーされるシーンはいかにもゾフィーにふさわしかったし、映画の中でも一番きれいなシーンだった。
オクタヴィアンが、美男俳優ジャック・カトラン。「ズボン役」(女性歌手が演じる男役。エレガント。)のオクタヴィアンを、オトコがやってた。もちろん、例の女装も。ただただ気持ち悪い。
元帥夫人(公爵夫人)も、エリーザベト・シュヴァルツコップには到底およばなかった。

べつに悪口ばっかり書くつもりはないんだが、映画で使われていた音楽、サイレント映画なのだが、サウンド版で、全篇に絶え間なく『ばらの騎士』のメロディーが流れていたが明らかに、映像と噛みあっていない。音楽が鳴る度に、音楽につけられたオペラの名場面が頭に浮かんでは、目の前の映像と衝突する。
この映画を観た客が、オペラの『ばらの騎士』を聴きに行くことをためらったら、これほど悲しい話は無い。


『ばらの騎士』映画版がドレスデンで上映された際、オペラの曲を編集して作った伴奏音楽を、リヒャルト・シュトラウスが指揮し、ロンドンで上映された際にも、劇伴をリヒャルト・シュトラウスが指揮し、その翌日に劇伴の一部が録音された。
Strauss Conducts 'Der Rosenkavalier' (←その1)
Strauss Conducts 'Der Rosenkavalier' (←その2)
こんかい使われたのは、明らかにこの録音ではなかった。



蛇足を申し伝えると、映画を観るまえに、ディスクユニオンで「サロン・オーケストラ版」と称する、"無声映画『ばらの騎士』のための音楽" を買った。2枚組。
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編成は、
フルート2本
オーボエ2本
トランペット2本
トロンボーン1本
第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリン
チェロとバスが一本ずつ
打楽器とピアノが一人ずつ
ハーモニウム(リード・オルガン)が2台


このCDを、全部聴いたら、感想を書き足す。
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by lecorsaire | 2014-11-14 22:41 | 映画

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


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