我れ若し女帝の密使なりせば

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石川慶 舞踏公演「さらばシリウス 白鳥の抄」

2010,11,21 東生田会館(向ヶ丘遊園)
石川慶 舞踏公演「 さらばシリウス 白鳥の抄 」
 
" 見上げた闇の先へ. 産毛をまとい. 今飛び込みます. "


(「抄」の字は、「手 + 少(斜めにそいで小さくする)」で、
サッと斜めに削ぐ動作、転じて「表面をかすめとる」ことをさす。
白鳥しらとりの姿や様子をすくいあげて写す、「抄」)




東生田会館で、石川慶の舞踏の公演最終日を、どうにか息絶えず。観終えた。
死の兆しにつつまれ. この時間も過ごした. 今夜もそんな「臨死体験手記」。



かつてはバレリーナであった、それはまるで王子のような石川慶がバレエシューズの結び目を、パンドラのリボン箱のように虹色に砕き. バレエを屠焼する. 舞踏へと。
跳躍で駆け上がるクラシックバレエの審美がグロテスクの極点めがけて沈みこむ.


真珠の死骸のようなバレエシューズ達の光を背に、カリグラ(兵隊靴)というべき大柄なブーツで. 地平線を闇に染め. やみの中に形を溶かす, 始源へと.

漆黒が、波紋をひろげる。---------バレエ団総督の王子が、バレリーナ達に湖底ふかく沈められて魔獣に生まれ変わると白い鳥を餌食に棲みわたった黒い湖が震いたつ。
魔獣の腹の内壁を食い破り. 雌雄同体の白鳥にうまれ白鳥ではない生き物が, 湖面にあらわれた.





--------おお、姿は---------王子そっくりか、それ以上だ。
黒水仙の白い影のような, 魔獣のかつての美しさを吸い上げてしまった.








客席には、誰もいない。みんな客たちは一人ずつ、床に散った、バレエシューズ達の中に、一足ずつ閉じ込められ。
王子の鼻で, 魔界の嗅覚が, 客夢の狂った匂いを伝えるシューズを奥底までほじくりだす. カリグラのブーツで湖面を踏みしだき、真珠色のバレエシューズの数珠つなぎを水面下の魔獣の死にギモもろとも躰に巻きつけ. 両眼と両のゆび爪に真紅の星珠が嵌まり, からだは匂いに応えると陽物の陰嚢と額の陰裂のすべての襞すべてを爛壊する。
魔匂の中心で, 結び目は秘密のように解き放たれた。


滑らかな白い革靴に反映する白い光をあびて歌声のように打ち震える白い妖気---------
そこに彫石立ちする、紫の目, まばゆい髪, そして燃え立つように輝かしい白い肉体-------
輝きのない空間がすみずみまで淡く染まる時間, ---------
巨大なスカーレッドのローマ大天蓋の下の黒瑪瑙色の海に降り注ぐ淡い紫色の大気のなかで、
ガレー船の水葬旗と松明とに仕込んだ香油に滲む大気の重い力のなかで、
「カリグラは、黒鳥に蹂み躪じられる」



死がせまったカリグラは、床の底の武器の足音をききつけて、五体脱皮的な静謐に、身心を沈める。
(光も無い身体内の---------総ての血管、心臓の各襞、肢体の神経、毛髪の根、筋肉組織の発汗点、脳の各葉、表皮の各孔、臓腑の螺回、その他あらゆるところに、はげしい腐蝕作用がうちひろがって、五体たちまちに溢れ、熱っぽく、くすぐったく、さては毒気を帯び、掻き毟り、突張りだし、暴れ出すといったそのさまは、幾千もの針を皇帝の籠のまわりから盛大に突き刺すのと同級の騒壇である)


*


チャイコフスキーのバレエ音楽の中で、石川慶が立ちあがると,
エトワールバレリーナ達のさかさま肖像画を背に, ばかでっかい円周を描いて、はだしで地平線を踊りまわった。
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by lecorsaire | 2010-11-26 15:09 | 公演

VEXATION ライヴ 

2010,11,20 Parabolica-bis(浅草橋)
「 VEXATIONライヴ 」
緋衣汝香優理 個展『翼の記憶』によせて






夜のカレイドスコープ・オルゴォルは、さかさ回りにワルツをきざんだので、先のとがった円舞シューズ(虹いろ)の砂糖菓子のあしあとが漆黒の床一面。

あしあとを、ケーキ皿にのせて不用心に口をつけると舌と歯が頽廃するほど味が濃い。砂糖はメリーゴーランド宮殿の地下倉にジッと寝かせた極上物で、禁制品なので、これで造ったお菓子を召しあがるとみんなご気分が蕩ろけて、ラセンの階段をかけのぼってしまい、天井階も屋上もはるか越え、そらにひろがった、天邪鬼の蜘蛛の巣(オモチャ)でできた音楽の真ん中にからめとられて、あまく織りこまれてしまう。

パラボリカ・ビスからのぞむ、2010,11,20 は満月夜で、アサクサバシは何やら消防車がひしめきあって仕事狂い。
愚かさが貴さの夜はたっぷりと、時間の羽根をのばした。






ありがとうVEXATION ついにあなたたちのところに戻れた。


客席あちこちで、感涙にむせぶのが聞こえた。



ぜんぶよかったけれども、特に気に入ったのが、


『ある晴れた日に』(一音目で目頭が熱くなった)
『病める薔薇』(薔薇窓をひろげた扇が秘密の香りをおくる。)
『電気のワルツ』
『エデン』
『私はヲ人形』(はじめてこの曲を聴いた十年?以上むかしの記憶を思い返しながら聴けた)
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by lecorsaire | 2010-11-22 11:41 | 音楽

"生死の大人遊び" 吉本大輔×小田巻美良璃コラボレーション


経王寺のあちこちには水子のお地蔵が、ちんまり手をあわせて立っていた。





石段を本堂まで登っていく足もとに垂れた、赤い長い帯が、産道かへその緒であるかのように、濃密な時間の予兆、予感をかきたてた。

大輔さんの舞踏に、触れるというより身を浸していると、どうらんを塗った肌いちめんからただよう白い轟きのなかにつぶれそうになる。流麗さを捨て去った舞踏が、公演の時間を、裂け目だらけにしてのたうちまわらせ、吸収する空気や視線、イマジネーションも舞踏させてしまう。
本堂の中心で大輔さんが白光し、左右にひろがる一双屏風が、表面に打ち重ねた無数の赤手形をまるで彼岸花の園のように咲かせている。玲瓏な芳香がなみうつ。ユリをたばねると鞭にして、南蛮苦行者のように白い肌をムチ打つ。
バッハのシャコンヌを、寺じゅう外まで響かせ、車道にとびだしヘッドライトとクラクションをかきわけながら庭に戻ると、暗中にしみわたるしらはだを脈動させ、天まで伝うと、舞踏する星のきらめきが夜空の淀みをあらいおとす。

水子!?たちの、濃い匂いが、庭中を、どかどか走りまわる。
「コラーーーーーーッ、ちゃんと、踊れ!!!!!!」舞踏の"大人遊び"が逆回転し、生と死の結び目があかいオビのうえで、妙なる文様をひろげる。



開演20分ほどまえに庭にいた黒猫は、その後二度とあらわれなかった。
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by lecorsaire | 2010-11-04 19:29 | 公演

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


by lecorsaire
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