我れ若し女帝の密使なりせば

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カニバイシュ!









フィルムセンターのポルトガル映画祭で、マノエル・ド・オリヴェイラのビザールなオペラ・ブッファ映画『カニバイシュ』(1988)を、みた。
有名な『アブラハム渓谷』の5年まえ(80歳)に撮った映画だ。
オペラ歌手はぜんいん、おもしろくもない歌い手ばっかりで、彼らのバックでとびはねるナルシスティックな楽師のヴィオロンも、全篇スカスカ。

しかし映画は、なんとも例えがたい味覚をたたえている。


現代の多分リスボンの壮麗邸宅がオペラの舞台で、貴族ばかりがあつまって、夜宴と舞踏会をひらく。
主人公のド・ダヴェレダ子爵を筆頭に、ゴシックな贅沢調度品と巻き毛かつらの邸内従者たちをまきこんで、鬱屈な大オーケストラが轟く。
ド・ダヴェレダ子爵に愛をささげるマルガリータは宿命的な処女性にソプラノをふるわせ、彼女への報われぬ恋と子爵への嫉妬に狂うドン・ジョアンは尊大趣味むきだしでテナーを哭ききる。
が子爵は、秘密をかかえこんでいる。

登場じんぶつたちは、ひとりひとりが奇跡を待っているのだ。「古い時代には奇跡がよく起きた」貴族たちは時代の移り行きを拒みつづけることで、奇跡が安心して入りこみやすい、古怪な城館や、典雅な絹服を愛着する。

子爵の秘密が、マルガリータとの結婚初夜の、暖炉がもえさかるゴシックな装飾寝室で明かされる。
「子爵は現代のケンタウロス」半分は人間で、半分は機械の手足の、「いもむし胴体」だったの
だ。
ごろん、と胴体が、暖炉におっこちても、子爵は火のなかで、バリトンをうならせる。
しかして翌朝。焼けたからだは、子爵の親兄弟の食卓にあがる・・・・・
昔だったら、食人料理は貴人のりっぱな儀式であった。
今それをやったら裁判になる。しかも「子爵の肉は、マズかった」。
マルガリータはベランダから投身自殺し、ドン・ジョアンは傲慢の果てのピストルの自決弾で頭内の脳天をひき裂くつもりが、撃ち違って大ケガをし、ジリジリと死が体にまわって、こときれる。
ところがラストで、奇跡がおこってしまう。ドン・ジョアンもマルガリータもみんな生き返り、貴族とその召使が全員で輪おどりする。
おどりの楽師は、ヴァイオリンを奏でる豚だった。みんなで牙をふりたてて豚に喰いかかる。
「豚勝じゃなくてトンカツ食べてウマかった」( 「誰がウマやねん!」ケンタウロス子爵 )









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by lecorsaire | 2010-10-02 19:31 | 映画

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


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