我れ若し女帝の密使なりせば

lecorsaire.exblog.jp ブログトップ

<   2007年 12月 ( 1 )   > この月の画像一覧

HAXAN! (映画『魔女』1921年)

昨年に、まさかの日本語版DVD発売が実現した鬼道映画"HAXAN"(映画『魔女』)を、外でみるのは今回が二度めになる。


d0242071_19222875.jpg


会場の、文京区本郷中央教会の礼拝堂には古い映写室があり、むかしは頻繁に上映会をおこなったそうだが、教会精神まさに逆道苛烈な『魔女』がクリスマス公開とは、スクリーン画面下に鎮座まします神さまの椅子もビックリな聖夜になった。



お客甚だ多し。いちかわ西洋館の渡辺館長もいらしている。暗黒耽美なファッションでの来場者も少なくない。マイミクのLUNAさんがご自慢のお着物すがたで、バケモノのフィギァを連れて木の椅子に。なりゆきの心霊写真ばなしで盛り上がっていると、関東大震災による倒壊全焼から復工した木造に響くお客さんの声が、二階の天井席までぎっしりとうまっている。女子高生の団体や、小さい子供の声もきこえてくる。


今回つかわれた『魔女』のフィルムは、一大数寄道に狂った個人コレクターのもちものだろうか。
ひなびた劣化ぐあいが妙な生々しさを先端まで匂わせ、ストーリー性よりもバケ学考察をねらった作風のリアリズム描写が、まるで実景を隠し撮りしたような緊迫感でせまってくる。老いた魔女たちが媚薬を調合し、神父の侍女に売りつける。材料は絞首刑の罪人の片手と、いきた蛇とヒキガエルのすりつぶし。・・・・・若い魔女は尼僧服をぬいだ裸身に秘薬をぬるとホウキにまたがって空を舞い、奢灞都(サバト。『魔女』の監督ベンヤミン・クリステンセンの創造力がバビロン乱舞し、本人もサタンに扮して出演した)の儀式で魔王の尻に接吻した翌朝に、邪竜すがたの子供を出産する。
1920年代の公開当時、だれがこれほどの残酷で自由な描写を望んだことだろうか。クリステンセンは興業先の各国で教会組織の批判、検閲の大なたカットにさらされ続け、映画の罪深さは闇雲にふくれあがった。


伴奏音楽がすごい。わがマイミクのディアンヌさん(柳下美恵さん。日本唯一のサイレント映画専門の伴奏者)のピアノとオルガン(今回はなにか、憑きモノにふちどられていた)に対流する古楽器奏者の近藤治夫さんの、月の光が震えんばかりの弦奏ねいろにつつまれた礼拝堂が、足元から日常感覚を消滅させていく。画面が地獄の魔獣を撮らえると、キモがひえるようなバグパイプが轟いて、柳下さんも中世太鼓で応える。音楽が止んだあいまに教会の外で救急車のサイレンがよこぎる。つぎはどんな楽器がでてくるんだ!?と、十種類ほどもの、近藤さんのパフォーマンスは今回のみどころであった。






スクリーンには上映後も、『魔女』の余像が立体レリーフをえがいていた。

d0242071_1923710.jpg


神さまの椅子にも、ハテナ誰かが坐っておられた
[PR]
by lecorsaire | 2007-12-26 11:22 | 映画

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


by lecorsaire
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite