我れ若し女帝の密使なりせば

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吉本大輔「エロスとタナトス」2007

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7月4日の、湿った雨にしぐれた青山の、草月ホールのフワイエあちこちに、「エロスとタナトス」原作者スタニスラフ・ドゥ・ガラ咀嚼公夫人の幾何学庭園モニュメントさながら、井桁裕子さんの人形たちが展示されている。
吉本大輔さんの上半身をえがいた人形にはどぎもをぬかれた。片手しかなく、その指は七本ある。吉本さんの人形のさばにいた可愛い女の子(の人形)に気うつりしようとすると、襟首をうしろから、七本指でつかまれた。「吉本大輔式庭園殺人事件」の主人公になったりしたら、それこそみんなの恨みが怖いので、ホールの客席に逃げてゆく。

最前列の席に陣どり、死刑台にして死刑執行人席に腰をしずめるお客さんたちをながめる。どんどん入ってくる。みんなまだ、現実焼けした表情そのままで顔面がつるつるしている。その顔がまもなく・・・舞踏と、見る目と、襲われた心とが劇しい断絶面にきわだちにさいなまれて、美しい廃墟へと化神するのだろうか?
赤いショールをかけた少女がひとり、開演していないステージにあがり、カサブランカの白い束を、ステージ上の椅子のそばにささげて去った。




・・・ステージが冥動する、フルヴォリュームのヴァイオリン独奏の狂奔を吐きちらす肌と肌とが、しろい太陽のうねりを床いっぱいにたたきつけてころげまわり、おんなのほうの裸身が吉本大輔の裸身に、鋭い血でふくれあがった手足の爪ぜんぶでからみつく。両性具有神の、刃を逆立てた羽毛つばさの飛翔はヴァイオリンの断弦によって四散し、マレボルジェmalebolgeの奈落にたたきおちる。

そして前回公演でも見たあの、もっとも充密した時間、「重く静止した一枚の絵」さながらの息づかいが草月ホールに轟いたのである。
現実時間のスピードを踏みつぶす、禁圧の絵すがた全面に”永遠の夜”が脈動し、巨大な森がひろがった。前回を超えてやまぬ肉胎の森、祈り、ささやき、歌い、むせびなく、残酷で排他にみちた森の根の魂の大地下茎が、吉本大輔の舞身いちめんにうきあがり、残像を脳膜にやきつける震動脈を、夜歩きのしずけさでえがいた。これがずっと続いてもよかったんだが・・・

Lasciate ogni speranza voi ch’ entrate!!!!

ステージをかこむ、死刑執行人席から射られる矢の傷に弾かれる形に乱舞する吉本大輔が総身に、カタストロフの占星予言絵巻で綴った聖セバスチァンの罪衣をつけると刑吏席は火刑台の雷撃音をとどろかせ、弓矢の鏃と矢羽根の大群が裂腸虹彩にまみれた舞身の痙攣めがけて到絶する。
火刑台がしずまると、傷まんだらに染まった衣装は脱ぎすてられ、ステージをおりて、死刑台のよこの死刑執行人席に、ぶちまけられた。
いすに縛られた人間たちを拒絶し、天からおりる光のはしごをも拒絶したヨシモト・ダイスケは、紋章図のように二頭むかいあう雌龍さながらの影を壁の左右にえがき、地獄門を隠すその背には熾天使ビエルゼバブの六翼を逆さ向きに、ひろげていた。そして、完全な闇。


拍手。拍手!!!
投げ込まれる花束のむれ・・・・・・・・おっ。
「これから遊びをやります」おおおーっ!!!
客席は、死刑囚と死刑執行人の手袋をぬぎすてたその下に嵌めたディオニソスのてぶくろで手拍子をとると、赤いハイヒールの吉本さんが、ステージじゅうの花束をひっつかんで床にぶちまけ、宇宙誕生の猛り狂いを放出させる。ネイティヴ・アメリカンが遠方からの賓客をもてなすために大切な家宝を壊してみせる「ポトラッチの儀式」さながらの空間にテンションは沸点ギリギリ。そでにひっこんだとおもったら、モップをもちだしてステージを・・・・・掃除してない!ますます床のカオスをひっかきまわしている!もう、何だかこれ以上、なに書いていいのかわかんないよ!!!!??!!



拙文が、広告チラシにも載って、宣伝に一枚かませていただいた「エロスとタナトス」2007/7/4は、終わった。そしてその余韻は、日本じゅうから駆けつけてこの公演に襲われた者すべての心身に、永遠に生き続けるだろう。
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by lecorsaire | 2007-07-06 16:56 | 公演

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


by lecorsaire
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