我れ若し女帝の密使なりせば

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銀座で『雨月物語』

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江戸の頽栄期に、能楽・金春家の大御殿がひろがっていたあたりの地下空洞を瀟洒に飾ったbar「貴族」にて、上田秋成の、古色な字づらをなぞって現代ことばの艶欲地獄を導いた、「雨月物語・蛇性の婬」の朗読パフォーマンスをみてきた。


第74回山口椿の会 チェロ/山口椿、朗読・ダンス/雪香
以下<>は、ご案内のハガキ文を拝借。

<柔弱で世間知らずな青年豊雄は、雨宿りの途中であったあでやかな未亡人真名児に魅惑され、誘われるままに契りを結ぶ。>


頭も尻尾もない、チェロの音色が絵巻物語のような美殿にまといつく雲流をえがき、伴奏と独奏とのヤヌス双顔神の輪郭をうねらせて、朗読のことばのうねりと共鳴する。
正しい形より、絵画性、儀式性、予言性をたたえた形の文字列でものがたりを綴る、筆先をかかげた先端からしたたる墨痕が、射精のミルククラウンをえがく。


<真名児は豊雄に数々の宝物を贈り、酒色でたぶらかすが、その財宝はことごとく盗品だった。>


”金銀(きがねしろがね)を飾りたる太刀の、あやしきまで鍛ふたる古代の物”熊野新宮の宝庫から紛失した宝剣を豊雄におくる真名児は、能面のかおだちと、「怪談牡丹灯篭」のモチーフにきらめいたドレスの総身とを、幽玄な舞い足に流立させ、朗読の台本を置き去ると、
支えピンの上で振幅麗々たるチェロ、
濃度を増したミルククラウンの周囲を、
能も歌舞伎もしのぎたい無垢な慢心をたたえて転舞する。


<ことが露見し、捕縛された豊雄は、真名児の館へ役人どもをつれていくと、彼らの目の前で、突如美しい真名児は、大音響とともに蛇体に変身し・・・・>


ミルククラウンは凍結し、はじける八球のしずくは大蛇・おろち・雄呂血の眼球を血ばしらせた。
大蛇のきばも般若の角も舞踏に染みた指先は朗読の台本をつかみ、唇いろをにじませて、
雪を積たるよりも白く輝々しく、
眼は鏡の如く、
紅の舌を吐いて、
終幕まで一呑みに飲む勢いで語りくだす。

豊雄を背に、かなたへ消え去った魔獣ののこした、荒れ屋敷を庭じめんごと地平線へと溶解・流鬱させるチェロの、淫々滅々のこだまが、とおのくにつれて、余韻はますます深みをおびる・・・・




・・・・ん?
(舌のうえに、異物を感じます。指をつっこんでいる最中)

(ちょっとびっくりして、つばを呑む音)

指先に、蛇のうろこが二枚、はりついている。
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by lecorsaire | 2007-01-21 18:40 | 公演

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


by lecorsaire
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