我れ若し女帝の密使なりせば

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Tristan und Isolde

池袋、東京芸術劇場大ホールにて、新交響楽団創立50周年演奏会、11月12日のマチネで、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』抜粋(演奏会形式)を聴いた。

新交響楽団は1956年に創立されたアマチュアオケで、まだ国交が不安定だったころのソ連への演奏旅行や、ショスタコーヴィチの最も難解な交響曲第四番を日本初演するなど伝説を築いている。
指揮者はバイロイト音楽祭などでワーグナーマエストロの名も不動な飯森泰次郎、イゾルデを歌った緑川まりは5年前に新国立劇場で『サロメ』のタイトルロールを聴いたことがある。

期待とともに、不安もつのった。オペラ『トリスタンとイゾルデ』の、端から端まで絶妙な線のひとすじを描く音楽のながれにカットをいれて、”聴ける”演奏会になるのだろうか・・・・牢人ぽい格好(笑)、ステッキとソフト帽すがたで、会場のロビーをあるきまわった。

第一幕の前奏曲がはじめの数小節を奏でると、聴いているからだが、ただちに高揚しはじめた。
そしてトリスタンとイゾルデが愛の薬を嚥み、二人歌いの芳烈劇がうまれると、指揮者とオケ、歌手と合唱が、ひとすじの流れをつかんでいることを確信した。「これはすごい演奏会を聴きにきたぞ」と、つばをのむ音があしの先までひろがるのを感じた。

第一幕、第二幕を聴き終わったとき、これほど甘美な抜粋版をつくってしまって、切り捨てた箇所が泉下のワーグナーに呪われないだろうか・・・・と心配したくなるほど、酔い深く、罪深い演奏を堪能した。第二幕の、酷愛の二重唱から恋人たちの破局に至る終盤の、やるせもない猛りにはどこまでも目頭があつくなった。

そして最終幕。この前半には、大好きな、トリスタンの長大なテノール独唱があり、今回いちばんの期待どころだった。

が。

残念ながら、ここがかなりカットされていた!!!

あまりにもよい公演でしたので、少しぐらいはウラミをいわせてもらいます。

しかしながら、ここで切られた部分の”恨み”と”毒”は、終盤にむかって、低みから高みへと流れおち、ラストの『イゾルデの愛の死』の、胸がつぶれるような高揚感、臨死体験の眼前にひろがる花園さながらの、濃潤な虹色がうずをうねらせ、聴いているからだをつつみこんだ。もう耳だけでは聴けない、指先で、臍の底で、のどの神経網で、消えゆく音楽を、一滴残らず吸い上げる貪婪さで、『トリスタンとイゾルデ』新交響楽団演奏会に肉迫しきった。


全幕、椅子にすわっているのがもどかしいくらい・・・・曲にあわせておどりたくなった!演奏者全員の活気と熱力が、耳を無視して腹から全身にほとばしり、一幕おわるごとに、汗ばんだ両手を洗いに行かねばならないほどだった。

久しぶりに、「このよろこびが永遠に続いてほしい!」と嘆願したくなる公演でした。いまも余韻がさんさんと胸をうちつづけます。『トリスタンとイゾルデ』は、しばらくCDとかで他の演奏がききたくない気持ちです。

公演終了後、チケット取り寄せでお世話になりました、楽団員の、mixiネーム・ヒロさんのお導きで打ち上げに混ぜていただき、指揮者の飯森さんやソリストの方々などのスピーチを拝聴し、『トリスタンとイゾルデ』以上の世界(?)をアルコール片手にたわむれました。
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by lecorsaire | 2006-11-13 18:38 | 音楽

「騎上の陛下におかせられては周知のごとく、人生はもっとも大胆で華麗な賭けをうたう剣とマントの物語でございます」


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